[ぷにるはかわいいスライム]週刊アニメ考察アーカイブ

「佐倉ジェンダー研究所web令和本館( https://note.com/tomorine3908_nt )」のほうで、原則として毎週リリースしている記事「週刊アニメ考察」シリーズ( https://note.com/tomorine3908_nt/m/m579b52eebb18 )から、取り上げたアニメ作品が放送終了など一段落した時点で、作品ごとに、此処でまとめ・再構成していきます。

当記事では、2025年夏クールに放送・配信された、『ぷにるはかわいいスライム』の2期の分を集めました。


※「ぷにるはかわいいスライム」公式サイト
 → https://puniru-anime.com/


 [20250908]週刊アニメ考察.jpg

「ぷにるはかわいいスライム」
第13話:ぷにるリターンズ
とりあえず今回のところは、1期のラストで修行に去っていったぷにるが戻ってくるエピソードを通じて、主要キャラの再紹介と、コタローとぷにるの関係の再確認をする第2期の初回
(話数は公式サイトでは1期から通算されているので、それに倣います)。
しかし油断してはならない。本作は、一見ラブコメ風味を含んだドタバタギャグアニメのふりをしながら、じつのところジェンダーの問題にまつわるものすごく深遠なテーマを扱っている恐ろしいコンテンツ。
「かわいいモノ好き男子」属性であるコタローの懊悩と、それを背景とした誕生の経緯をを持つぷにるをめぐるドラマツルギーは、1期でも思わぬところで視聴者の心の奥底にある地雷を踏み抜いていったものです。
つまるところ、ここにも話の根底には「性別の壁」がある……。
なのでこの先、どのような展開を、こんな日曜の夕方に見せられることになるのか、気を引き締めて臨んでいきたいと思います。
https://note.com/tomorine3908_nt/n/nad990de87c6b


「ぷにるはかわいいスライム」
第14話:異世界で幼馴染のスライム…バレンタインもあるよ!
2期の2話め。原作との兼ね合いか、後半が季節外れのバレンタインデー回。
「バレンタインデーとは女性が愛の告白として男性にチョコレートを贈る日。そんなふうに考えていた時期が俺にもありました」
ということで義理チョコや友チョコ等々が入り乱れる昨今のバレンタインデーの趨勢を上手く取り混ぜながら、本作ならではのドタバタカオスなエピソードにまとまってました。
で、ぷにるはスライムなので生物学的性別はそもそもないわけなのですが、本人自身の性別の自覚もまたないし、装い次第で他者がどう見てくるかが男女の違いという認識でいることが、さりげなく明かされました。
しかして、作品制作側のジェンダー観もそういう方針ですよという、あらためての宣言なのでしょうね。
社会生活の中で「なりたい自分」を実践した結果として、他者が自分をどう見てくるかも変わり、そこでの解釈が文化的な性別概念と照合されることで、再帰的に各自の男女いずれかの属性が成立する……的なことは、[佐倉智美『性別解体新書』]でも詳述してありますが、ソコに寄せた話を、こんな日曜日の夕方放送のドタバタギャグアニメの体裁の中にしれっと入れ込んでくるとは、いやはや「ぷにるはかわいいスライム」、恐ろしい子;
この先もやはり見逃せないようです。
https://note.com/tomorine3908_nt/n/n86a39d23a389


「ぷにるはかわいいスライム」
第15話:RUNE RUNE DANCE
2期も3話め。脂が乗ってきました。
そして例によってドタバタギャグが次々と展開する中で、ふいに「他人の価値観で自分をつくってたら、本当の自分が消えちゃいます」といった名セリフが飛び出すから本作は侮れない。
「男はカッコよく(カワイイものが好きではダメ)」のようなジェンダー規範に限らず、世間に流布されている因習的な価値基準の数々、それらと意識的に距離を置いて、なりたい自分になる・そう在りたい自分であろうとする、ソレが大切だ。やはりこれが本作の基底にある前提なんですよね。
あと、御金賀アリスは、一見すると高飛車なお金持ちお嬢様キャラに造形されてますが、じつはいろいろ深くて重い設定を背負ってて、いわばコタローと対を成すもう一人の主人公だと言えます。このあたりのキャラ配置も本作は上手い。
そして次回から新キャラ・新展開。はてさて、どうなっていくのでしょうか。
https://note.com/tomorine3908_nt/n/n1defea13c530


「ぷにるはかわいいスライム」
第16話:ホビーよりもパーフェクトな存在
ついに登場、ぷにるの「ライバル」キャラと言えるジュレ。
しかして物語が一気に「ラブコメ」っぽくなりましたが、今日のところはいかにもなドタバタで済んだものの、これ、この先またまたすごい深いテーマにつながっていくんですよねー。
ちなみにジュレ、原作をチラ見したときの印象だと、もっとクールで知的な策謀家な印象だったのですが、どうやら意外とポンコツなようです。良い意味で話が盛り上がるキャラ付けと言えるかも。
あと、さりげなくセリフに入っていましたが、ジュレ本人は自身の性別属性を「女」だと認識しているようですね。生物学の枠外にある存在が男女二元的にジェンダー属性を自認する――。このあたりはどういう設定で、今後の展開にどうかかわるんでしょう。
それから、真戸博士の設定の「会費未納で学会を追放された」ネタって、あるていど学界にコミットした人でないと思いつかないと思うんですよね。もっと言えば、学会費を滞納して学会誌の除名予定者リストに名前が載った経験がある、みたいな。原作者「まえだくん」の経歴の詳細は公表されてないですけど、思いのほか凄い学位持ちだったりするのかも!?
ともあれ「まえだくん」氏、このようなドタバタギャグまんがに上手くラブコメ要素を落とし込み、そのうえでひそかにジェンダー問題の核心に迫るようなテーマにも触れてくるとは、侮りがたい人物なのは間違いないでしょう。
https://note.com/tomorine3908_nt/n/n611be53a38b2


「ぷにるはかわいいスライム」
第17話:ぷにるパワーアップ!? 君の目で確かめろ!
今週も他愛のないドタバタギャグが前景となっている中に、さりげなく織り込まれる「かわいいモノ好き男子」コタローの葛藤。
ちょうど放送時間が日曜夕方になったというメタ台詞もありましたが、その点もふまえて、ソコのところに関してどこまで踏み込んだ描写がこの先あるのか、引き続き注目です。
あと、コタローがぷにるを「かわいい」と言わないことにもソコが絡んでいる描写が以前にあったのを念頭に置くと、タイトルが『ぷにるはかわいいスライム』なのも意味深かなという気がしています。定石に沿ってタイトルつけるなら「かわいいスライム ぷにる」か何かになるんじゃないですか? それをあえて変えてあるのは深いと思います。
https://note.com/tomorine3908_nt/n/nc23d3a9f1daf


「ぷにるはかわいいスライム」
第18話:人間のハッピーエンド
「ジュレ編」の「ラブコメ展開」、ギアが上がってきました。
性別役割や「男女」の位置関係、そして「かわいい」をめぐる捉え方などは、じつはぷにるのほうが先進的であり、これが人類社会の主流になれば、確実にみんながラクに生きられるようになるわけですが、そのあたり、視聴者の現実社会でも、そして作中世界でも、まだまだままならないようです(ぷにる曰く「不自由な人間」)。
そしてぷにるに立ちはだかるジュレが学習した「男女」の関係性にまつわる各種の知識。これがインターネットを検索して得たものだということは、すなわちコチラが未だ人類社会の多数派であり卓越的な価値基準として君臨しているという状況を表しているわけです。それがライバルキャラが用いる行動原理として、否定的な文脈に位置づけられているというところが、本作のじつに深いところです。
https://note.com/tomorine3908_nt/n/ncf2a6c4f8cb7


「ぷにるはかわいいスライム」
第19話:真夏のルンルーンリゾート
夏休み。水着回。
そんな定番の枠組みのようでいて、定石は外してくる本作。
「ジュレ編のラブコメ展開」の中でコタローの気持ちは揺れます。
結局「好き」の軸線は多層的・複合的だし、それを異性愛ルールで割り切ろうとしている現行の卓越的な考え方に囚われるほうが無理がある。
そんなところにも斬り込もうとしているのでしょうか。
ドタバタギャグというコーテイングの隙間から現れるエッジの効いたシーンが鋭いです。
https://note.com/tomorine3908_nt/n/n6c910ace9900


「ぷにるはかわいいスライム」
第20話:トリック オア かわいい!
「ジュレ編のラブコメ展開」が継続する中でのハロウィン回。
例によってドタバタギャグ展開が怒涛のように連なる全編ですが、そんな中にも、コタローの「かわいいモノ好き男子」属性をめぐる葛藤や、それでもぷにるたちと現在を過ごすうちに少し前を向けている自分の再発見などの描写を挟んでくるのは、なかなかエモーショナルです。
「かわいい」は、ある意味「カワイイは正義」であり、本来は性別にかかわりなく望む人は誰であれ「かわいい」へアクセスできることが基本的人権であり、それを保障することはまさに絶対の正義なんですけどねー。
https://note.com/tomorine3908_nt/n/n709dd177e5f9


「ぷにるはかわいいスライム」
第22話:ケンカするほど仲がいい
原作コミック第53話のリリース当時、ちょうどSNSに紹介が流れてきたのを偶々見かけ、その北斗の拳パロディ絵柄に惹かれてうっかり気軽に読み始めたら、心のカサブタのえらいところに刺さって抜けなくなってしまった、その当該エピソードがついにアニメ版に顕現。
そう。本作が一見するとただのドタバタギャグまんが/単なるラブコメでしかない、そういうフリをしながらじつは恐ろしくシビアに作り込まれている、そのテーマの核心に迫る案件がコレです。
ぷにるがかわいいスライムとして誕生した経緯。
それが、カワイイものが好き、というコタローの性質が、コタローが男の子であるという、ただそれだけの理由で周囲から否定的に扱われてしまうことと深く関わっていた。
そう、令和の世でも、存外に、人は自由に未来を選べない。
その大きな要因、その最たるものがジェンダー。
たかだかクリスマスプレゼントに好みの物品を所望することすら、性別を基準に、適正とされる範疇が別々に画定されてしまっていて、ソコから外れる選択は、社会的逸脱とされてしまう……。
ということで本作の深いところが見え隠れしながらの、次回への持ち越し案件には、なかなか気を揉まされます。
ちなみに今回、雲母先輩の家族も初登場しましたが、お父さんがエラい童顔キャラで、かつ専業主夫という攻めた設定も、本作の侮れないポイントですね。
https://note.com/tomorine3908_nt/n/na496bc84eb65


「ぷにるはかわいいスライム」
第23話:人間の条件
ついにサブタイトルが、ここへ来てドタバタギャグアニメのふりをするのをやめました。
ナンですか!? この、妙にテツガク的に攻めたフレーズは??
ちなみに「人間の条件」をGoogle検索にかけると[ハンナ・アーレントの著書であり、人間の本質を「労働」「仕事」「活動」の3つの行為様式から分析し、現代社会における人間のあり方を問うものです。また、五味川純平の長編小説とその映画作品のタイトルでもあり、戦争下で人間性を問う物語…]などとGeminiくんがまとめてくれます
(こういうのがAIの真骨頂ですナ;)。
そうした系譜に違わず、本作もまた、非常に深遠なテーマに迫る展開な今回でした。
そして何より、本作では、そうした命題の背後で、「恋愛ルール」や「ジェンダー規範」もまた問い直されている、ソコがじつに示唆に富み、また本作の独自性の高い意義があるところとだとも言えるでしょう。
検索したときの未だに多数派となっている情報に合わせた[恋愛成就のための女らしい行動]、それに準拠しているジュレがはたして………!?
次回も見逃せません。
https://note.com/tomorine3908_nt/n/nef6d82f5816a


「ぷにるはかわいいスライム」
第24話:世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
そんな、ある意味2020年代最大の「問題作」、ラブコメ風味ドタバタギャグの中にけっこう真面目で難しいテーマも含んでいる……のではなく、むしろこれだけ深遠なテーマをガッツリ扱う作品をあたかも表面上はドタバタギャグラブコメであるかのように仕上げたところが恐ろしい作品である、ということが顕になったアニメ2期最終回でした。
ともあれ、かわいいモノ好き男子であるコタローが世のジェンダー規範と折り合いをつけるための懊悩が物語のベースとなっているのが本作です。いわばジェンダー学会あたりからもっと注目されてもよいくらいの重要なタイトルだと言えるでしょう(ちなみにワタクシ佐倉智美も長らく会費払ってないので所属学会除名になりますw)。
そして今般のアニメ2期の主軸であった「ジュレ編」。
作中の「ラブコメ」要素を逆手に取って利用することで、本来は「好き」の内実はさまざまで多様(「好きの多様性」)であるところが現行社会の異性愛原理に則った恋愛ルールの価値基準によって如何に歪められているかを浮き彫りにした、その意義はあまりにも大きいです。
ジュレとの問答の中でぷにるが出した「ジュレは自身が理想化したコタローのイメージを実在のコタローに投影して好いているだけ」という指摘も、これは、現行ルールのもとで私達が正しい「恋愛」だと思い込んで実践している「好き」のカタチの真相/深層を、はしなくも言い当ててしまっている、ソコが「恐ろしい」。
ジュレの行動はWeb検索で得た情報を元にしていることが先だって作中で描かれています。したがってジュレの行動はネットで主流を成す現実社会の多数派の情報・知識に立脚することになります。
しかして、そう、自分の理想像を相手に投影してソレを好くというのは、決して特殊なケースなのではなく、むしろ「恋愛」が推奨される「性の賞品化」社会では、誰もが卓越的な情報に従って誰かを「恋愛」対象とした場合に、ごく一般的に普遍的に遂行してしまうことなのでしょう。そのことが白日の下に晒されたわけです。
さらに『ぷにる』が「恐ろしい」のは、そういう「好き」のカタチを否定はしないところ。
「自分が理想化したイメージを実在の相手に投影して好いているだけ」というのは、恋愛とはそんなものではなくてもっと崇高でスピリチュアルな営為だと思いたい人には受け入れがたいものかもしれません。しかし、この視点を用いることで、逆に、さまざまなあらゆる「好き」の実践が、崇高でスピリチュアルな営為となりえます。
2次元キャラやアイドル※に心酔する「オタク」活動も、じつは「現実的」な恋愛と本質的には何も違わない。ぷにるの指摘からは、そんな気付きも得られると言い換えてもよいでしょう。
むしろ崇高でスピリチュアルだと思っていたい「恋愛」の実相がじつはそうではないことを暴き出してしまう可能性を包含しているものであるからこそ2次元やアイドルの「オタク」は社会的逸脱とラベリングされる、そうすることで「性の賞品化」ルールを固守したいインセンティブが多数派には生ずる、そんな分析も可能かもしれません
(※「アイドル」の語源はそもそも「偶像」ですから、そこに何らかの理想が投影されるというのは辻褄が合っていますし、こう考えたとき、恋愛対象としての理想像を投影される存在として社会システム化されたものが現代のアイドルだ、などと言うこともできてきましょう)。
ちなみに今回のサブタイトルの文言は24話の脚本中では特に明示的に回収されたくだりは見当たりませんでした。なんとなれば、こうした「理想像を他者に投影した恋愛ごっこ」をこそ、なんのことはない、世間一般では《愛》と呼んで尊んでいた、そういうことだということにしていた、単にそれだけのことだったんじゃん、という意味での「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」だったと読むことも可能でしょう。
………やや話が逸れましたでしょうか。
いずれにせよ、ただの子ども向け連載・コロコロ系のマンガとそれを原作としたアニメだと軽く見られることまで計算に入れて深いドラマを展開しているようにも見える本作ですが、その真髄を見極められないような節穴アイとはオサラバして、私たちは本作の「恐ろしさ」をじっくり味わっていきたいものだと思います。
https://note.com/tomorine3908_nt/n/n46ef7295f456


 [20250728]週刊アニメ考察.jpg

 [20250825]週刊アニメ考察.jpg


◇◇

◇◇